人民元を使うFX取引で店頭と取引所の明暗が分かれている。
店頭取引では金利収益を狙う投資家が実際に稼げるケースが出始めており、じわりと存在感が高まりつつある。
一方、東京金融取引所の「くりっく365」では投資家が元を買っても金利差がマイナスとなることが多く、
売買は低調が続く。
IGマーケッツ証券は5月10日に「ドル・元」の取引を始めた。
6月27日までの取引数量はブラジルレアルなど新興国通貨9ペアのなかで最多だった。
元の買い持ちに対して金利が付与されることが店頭での元取引が堅調な背景にあるとみられる。
「元取引では金利収益を上げられない」というこれまでのイメージが変わりつつある。
あと、中国の金利が対ドルで相対的に高いことを映しているとも考えられる。
IGマーケッツ証券の元取引では「ノンデリバラブル・フォワード」(NDF)という通貨先物を使う。
通常、NDFは市場の流動性が乏しいため取引にかかるコストは高くなりやすいとされる。
元の先高観が強まれば需給の偏りから金利差はマイナスとなる傾向が強い。
このため、NDFを使うくりっく365の元・円取引で金利収益はマイナスとなる日が多い。
IGマーケッツ証券など複数の店頭FXで金利収益が得られるのは、外貨の仕入れ先である金融機関の違いも一因になっているようだ。
店頭では通貨取引の最小単位が小さいことも敷居を低くする。
くりっく365の10万通貨単位に対して、通常のFX会社では1万通貨単位から取引できる。
例えば1元= 12円で取引所で元を買うには120万円が必要だが、店頭では12万円で済む。
個人にとってはレバレッジをかける必要性が薄れるため取引のリスクは下がりやすい。
将来の元相場の切り上げなど、根強い先高観を背景に元を買い持ちする個人投資家は多い。
だが足元では中国経済の減速懸念がくすぶり、元安の可能性も排除できない。